近松とハゲタカ
女殺油地獄
近松門左衛門の名作で、歌舞伎や文楽でご覧の方も多いと思いますがほんのあらすじを。
天満の油問屋河内屋の次男与兵衛は義父が番頭上がりで遠慮しているのを良い事に店の金を持ち出し遊女に入れあげている放蕩息子です。
余りのやりたい放題に両親は勘当するのですが、生活に困っては可哀想と同業の豊島屋の若い内儀のお吉に頼んで小遣いを渡して貰っている。
それでもお金に困った与兵衛は義父の判を偽造して金貸しからお金を借り、返済を迫られお吉に無心をし、断られて逆上、お吉を殺して金を盗む、ざっとこんな話です。
主人公がお吉を殺す場面がこのお芝居の見せ場になっています。
油の樽を蹴倒した為、油が流れ出し、滑ったり転んだり油だらけになりながら必死で逃げるお吉を追いまわす「殺し場」はお芝居なのにすさまじいものがあります。
与兵衛は仁左衛門さんが持ち役にしています。2度見ましたが、ワル一辺倒でない複雑な不良青年を魅力的に見せてくれました。
で、何故「ハゲタカ」かと言いますと、玉ちゃん情報を求めてネット漂流をしていて「ハゲタカ」を取りあげたブログを拝見しました。
その方は劉の最後の場面は「女殺油地獄」に通じるものがあると書かれていました。
読んだ時、何故思いつかなかったかと一寸焦りましたね。歌舞伎だけでなく文楽でもこのシーンは見ているのに、です。
脚本と演出が「豊島屋の場」を意識したかどうか判りませんが。このブログの方のご意見に全く同感です。
油だらけなって髪も着物も乱れながら這い周り、追い回す。
普通なら格好悪いし綺麗な話ではありません。それでも美しいんです。
演じているのが仁左衛門さん(最初に見た時はまだ孝夫さんでした)
と菊五郎さんと言う綺麗なお二人だからかも知れませんが、違いますね、
積み重ねられた形式美を演じるお二人の技量で魅力的になったのだと思います。
劉は油ならぬ泥に塗れて死んで行きます。
泥塗れですから決して綺麗ではない。
玉山さんが綺麗なだけにここまで汚して演るのかとすさまじく迫るものがありました。
それもあざとくない、ごく自然に演じてあの長いシーンを見るものを惹きつけて離さなかったのですからたいしたものです。
格好悪いはずなのに綺麗!舞台と同じでした。
前述のように歌舞伎は練り上げられた様式美の世界ですから比較して同じと言うのは乱暴かも知れませんけれどね。
かなりの演技力だとあらためて実感しました。
この人、やはり只者ではありませんわ。
最後のシーンでオールアップだったのですね。このシーン「一生忘れない」そうです。お疲れ様!綺麗な玉ちゃんに戻ってこちらもほっ。
私が最初にこのお芝居を見た20数年前の歌舞伎座公演。仁左衛門さんと菊五郎さん。油だらけのお二人ですが、舞台では「ふのり」を使うそうです。
追記
このお芝居、玉ちゃんの与兵衛で見たいと思います。
どうしようもない不良青年ですが、玉ちゃんならどう演るかしら、と考えただけでわくわくしました。色恋でなく恨みも無く、只お金の為だけに後先考えずに人を殺してしまう。今ならいくらでもありそうな事件ですね。
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